「あこがれ」「ロールモデル」を大切にしよう


現代を生きる知識人として、私がいま心酔している人物トップ3として、梅田望夫さん、齋藤孝さん、茂木健一郎さんを挙げていた。(以前の記事
そのうちのお二人による対談集。これはもう、目をつぶって購入決定である。この週末までかかって読み終えた。
そして、私にとって多くの人に読んでもらいたい書籍、ナンバーワンである。

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書)

梅田望夫さんは、シリコンバレー在住の経営コンサルタント。「ネットに生きる」を公言し、ウェブがもたらす新しい時代の新しい生き方を若い世代に提示し続けてくれている。
齋藤孝さんは、「身体性」「祝祭の感覚」をキーワードに、大学生をはじめ子どもたちにも、とにかくたくさんの人に、「上機嫌な状態で」学ぶことの楽しさ、うれしさを現場で実践し続ける。


お二人の時間の使い方、生き方は、重なるところがないように一見思えるが、二人が共有する、共鳴する「ねっこ」というものがあり、だからこれだけ読んでいて気持ちのいい対談集ができあがったのである。


脱線するが、私自身が採用という仕事を続けてきて、「ねっこ」という部分について思うところを話す。例えば理工系の学生さんや若手(に限らず)エンジニアでいうと、手を動かしてハードでもソフトでもものづくりをするのが本当に好きか、没頭したらメシを食うのも忘れる位の体験をしたことがある、あるいは毎日そういうことを続けている、そういった、人から教えられるものではない自分の内側から湧き上がる思いのようなものを具体的なアクションという形にできる人というのは、エンジニアとしての「ねっこ」がとてもピュアで私は高く評価してしまう。学部生とか院生とか、関係ない。若くても「ねっこ」がしっかりしている人はしているし、どんなに偏差値の高い大学で学んでいても「ねっこ」がしっかりしていなくてスキルやテクニックに頼っている人には、魅力を感じない。
江崎玲於奈さんはその「ねっこ」にあたるものをネイチャーnatureという言葉で表現していたと記憶している)



さて話をこの「私塾のすすめ」に戻す。
ともに1960年生まれのお二人には生きてきた年数がひとまわり以上も少ない自分には、人生経験の時間の違いからその「ねっこ」をまったく同じ気持ちで共有することはできないのだが、じゃあその「ねっこ」ってなんなのさ?ってところはぜひとも本文で確かめてもらいたい。
というより、このお二人より若い世代の日本人は、全員必読にしてもいいくらいだ。


梅田さんは、この本のなかで、また前著「ウェブ時代をゆく」で、「ロールモデル思考法」という言葉を提唱している。齋藤さんは、「教育はあこがれにあこがれる構造だ」と言う。

自分の「学ぶ意欲」とか「生き方」に影響を与える人というのを具体的に特定して、「ロールモデル」として勝手にその人に「あこがれる」。
その「あこがれ」が、その人自身に変化を起こし、なにかの具体的な活動、アクションになると、次はその人を「身近なロールモデル」として「あこがれる」後輩が続く、そういう好循環をいろんな場面、場所で小さなものでもたくさん発生させられれば、世界はきっと良くなっていくのだ。



お二人の話の中にもでてくるのだが、「私塾」であったり「私淑する」ということを考えるのに、福沢諭吉吉田松陰を生み出した「明治」という時代の理解が欠かせないな、と改めて思った。そしてその明治の時代に生まれ、生前は恵まれた境遇になかったものの後世で評価された郷土の偉人であり高校の先輩にもあたる「宮澤賢治」については、さらにさらに自分にとっての心の最大の「ロールモデル」として理解と腑に落とすための思考を続けていこうと決心した。これについては別の機会に書くことになるだろう。



最後に。

この本は、読んで、いいこと書いてあったな、という感想を漏らす程度のなまぬるい本ではない。
梅田、齋藤、両氏からの、いまの日本への大いなる挑戦状である。特に若い世代に対しての。
確かに、多くの人にとっては一冊の本を読んで、人生が変わる、変えるほど体験はまずないといっていいかもしれない。
しかし、この本を読んで、またはこの本を起点とした関連作品を読み通して、動き出す人たち、アンテナが反応してアクションを起こす人たちが、少なからず存在するはずだ。
後に歴史が、『ウェブ時代の私塾提唱者とその門下生が日本の閉塞感をに風穴を明けた』などと記録するかもしれない。


20年後、30年後にやってくる未来が、いまより良くなっている、いや良くして行けるという事を、思わせてくれる作品である。



<おまけ1>

本文P188より

梅田さん

全国四十七都道府県それぞれ一ヶ所ずつ、ブログを通して知り合った人を訪ねる旅、「ウェブの細道」というのをいつかやってみたいと思っているんです。
・・・・・・
そうしたら「わたしのところへどうぞ」という人がかなり手を挙げてくれると思うんです。

齋藤さん

いいですね、「芭蕉プロジェクト」ですね。それは楽しいかもしれない。

に食いつきます。
私は岩手在住ではないですが、盛岡生まれ盛岡育ちの人間として『ウェブの細道:岩手盛岡編』は私に担当させてもらいたいです >梅田さん

実はこのくだりを読む前から、いつか夢として、梅田さんを盛岡や平泉に招待してうまいもの、うまい空気、綺麗な自然を堪能してもらえたら、なんてことを想像していました。だからここの表現を読んで、「!」とセレンディピティを感じました。←なんたる妄想力(笑)

もし先着順なのであれば、岩手編はすぐにでも企画を練り始めます!


<おまけ2>

例によって、梅田さん著作が出版されると、またたくまにネット上には秀逸な書評があふれるのだが、私も読んでいて気持ちが良かったものをふたつご紹介。


404 Blog Not Found:無限な世界、有限な自分 - 書評 - 私塾のすすめ
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51044373.html


[書評]「私塾のすすめ」から学んだ5つの教訓
http://d.hatena.ne.jp/shibataism/20080508/1210256408